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【Column】コロナ禍におけるキッチンカー事情 その2|こちる cochill juice

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3月22日より、二度目の緊急事態宣言が解除されました。
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、飲食店は21時までの営業、イベントについても1万人以内(4/19以降は、収容人数の50%以内)の人数制限が行われるなど、感染拡大防止のため、通常の営業ができない状態が続いています。

キッチンカーを取り巻く環境も、この1年間、そして緊急事態宣言解除後も非常に苦しいものとなっています。
今回は、前回のブログ「Column】コロナ禍におけるキッチンカー事情」に引き続き、キッチンカーの実情について、記事を書かせて頂きます。

コロナ禍でキッチンカーは、好景気!?

キッチンカーに関するこんなニュース、目にしたことありませんか?

●コロナ禍でテイクアウト需要が高まり、キッチンカーが人気!
●屋外で、密になりにくいキッチンカーは安心!
●テレワーク住人に大人気!高層マンションの下にキッチンカー村が出現!
●店舗を持っている飲食店から、キッチンカーへの参入が急増!

こんなニュースが流れていたら、確かにキッチンカーは好景気なのかと思ってしまいますよね。
もちろんコロナを契機にキッチンカーが注目されたことは一事業者として嬉しいことですが、中には表面的な情報だけが発信され、見聞きする人に誤解を与えるような表現が多いと思うことも多々あります。
確かに、これまでキッチンカーが出店していなかった大規模マンションに、キッチンカーを誘致した事例はあります。
業態転換支援事業として、実店舗からキッチンカーへ新規参入するにあたっての助成金制度もあります。その結果、キッチンカーの参入者が増えたのも事実です。
しかし、多くの(特に既存の)キッチンカー事業者が、窮地に立たされていることもぜひ知って頂きたいです。

キッチンカーって儲かるの?

キッチンカーには、大きく2つの出店スタイルがあります。
ひとつは、平日ランチ出店。もうひとつは、土日を中心としたイベント出店。
ランチ出店の場合、損益分岐点がどれくらいか?
出店する地域や商品単価、出店料等々によってもちろん一概には言えませんが、概ね、60食前後が出店しても何とか利益が出るレベル、ではないでしょうか。
その内訳は、以下の通りです。

売上  48,000円(@800円×60食)

経費  材料費  14,400円(売上の3割)
    容器代  6,000円
    出店料  7,200円(売上の15%)
    ガソリン代 300円(15km/片道程度の走行を想定)
    燃料代   100円
    人件費  8,104円(東京都最低賃金1,013円×8時間)
    駐車場代  700円(普段キッチンカーを停めるための駐車場 日割り換算)

利益  約10,000円

上記経費に含まれていない金額として、車両代や設備機器類の初期購入費の回収分税金関係、仕込み時の水道光熱費やキャッシュレス決済の手数料等、多々あります。
上記人件費は1名分なので、2名ならさらに人件費がかさみます。
また、上記は「売れ残らずに、完売した場合」の計算になります。キッチンカーの場合は、雨天時は出店を取りやめたり、出店しても売り上げが大きく落ち込むこととなりますが、その場合でも固定費がかかってきます。
つまり、この利益は出店できなかった日や在庫ロス分ですぐになくなってしまうか赤字になるほどの金額でしかないということになります。

単価が安い軽食類やコーヒー等のドリンク系のキッチンカーであるなら、その分販売数を確保する必要があるため、80食程度がひとつの基準となるのではないでしょうか。

そして、このコロナ禍で新たに出店場所として生まれたマンション等での販売の多くが、20~30食売れれば御の字という状態で、とても事業として成り立つレベルになっていないものと推察されます。
※一日限定など、イベントとしての出店を除く。通常のランチ出店の場合。

かといって、テレワークの普及が叫ばれるオフィス街に出すよりは…、出店場所がなく「開店休業」状態よりは…、と何とかこの状況を乗り越えようと頑張っているキッチンカーが沢山いるということをお伝えしておきます。

当店のキッチンカー稼働状況

2019年4月からキッチンカーの出店をはじめ、平日2日と、土日はイベントを中心に出店をしてきました。
ところが2020年3月より予定していたイベントが全て中止となり、1回目の緊急事態宣言発出以降は平日の出店も休止している状況です。
秋ごろより、小規模なイベントや買取案件などで、月1回ほどはなんとか稼働させていましたが、2回目の緊急事態宣言…。
開業当初から少しずつ人脈を広げ、信頼を得て、出店場所を増やしていったのに、それらのイベントは、まだ再開のめどがたっていません。
この1年間で出店予定だったイベントが何十日も中止になっても、キッチンカーは固定の店舗とは違い、何の補償もありません。

とはいえ、やみくもにどんなところでも出店できるわけではないのが、このキッチンカーの悩ましいところ。
ある日突然、ぽつんのキッチンカーが出現しても、どんなお店かもよくわからない。購入するには勇気がいりますよね。長い時間をかけて少しずつ信頼を得ていくか、イベントなどの場合は、しっかりと事前に告知をして、集客ができないと「出店するだけ損」な状態となってしまいます。

当店でも、ありがたいことにコンスタントにキッチンカーの出店依頼を頂くようになりました。しかしながら、ご依頼のうち、実際に出店させて頂くのは半数くらいかもしれません。
(イベント事って、だいたい日程も重なりがちなんですよね。。)

出店に際しては、ある程度の判断基準をもって決めさせて頂いています。
以下のような情報を頂戴し、採算性を確認してから判断をしています。

●(イベントの)集客予定 ※実績があれば実績値、なければ目標値
●キッチンカー出店台数
●周辺の飲食店情報
●会場全体の見取り図およびキッチンカー出店場所
●イベントの告知手段
●ご依頼主様の協力体制有無

もちろんキッチンカーは慈善事業ではなく、「収益を確保する」ために数字をシビアに見る必要がありますが、最終的な判断は、先方の熱意だったりもします。
主催者側と出店者側が、適正なパワーバランスであるか。Win-Winの関係を築こうとしているか、です。
「主催者のほうが上の立場だ」というスタンスや、「呼んでやっているんだ」的な考え方の方とは、絶対に仕事はうまくいかないので、お断りさせて頂きます。

イベントに向けて、予算取りや社内の取りまとめに骨を折って頂いたり、当日は私たち以上にジュースの宣伝をしてくださったり、休憩室やお弁当までご用意頂くことも。
「ひとつのイベントを一緒に成功させたい」そんな雰囲気が伝わる方との仕事はとても楽しく、ぜひまた一緒にやりたい!と思ってしまいます。

まだまだ大規模なイベントの開催は難しい状況が続きますが、人と人との繋がりを大切に、少しずつキッチンカーの出店機会も増やしていけたらなと考えています。